浅田真央ちゃん引退


浅田真央ちゃん引退表明。なんかTVで見た色々なシーンが去来する。残念なような止むを得ないような、もやもやした気持ちです。


シニア以上の抜群のジャンプと点数を出し、センセーショナルに登場してきた彼女。当時私は村主選手のファンで、若いライバルとして彼女を見ていました。ので正直応援していませんでした。ジャンプはいいんだけど、演技マイムの面がちょっとあっさりしてる印象だったので、そこも好みじゃなかった。


やがてキム・ヨナというライバルが登場します。所作の柔らかさと芝居演技の上手さで、自分は彼女のファンになりました。バンクーバー五輪での真央ちゃんとヨナの勝負は、今でも「真央ちゃんの点が低い」疑惑が言われますが、自分はヨナの弁護すら書いた記憶があります。


ただ真央ちゃんも、ロシアの重鎮コーチ・タラソワに師事し、ステップなどの表現面の向上を図ります。猛練習の成果もあって、演技マイム面・表現面でも恐ろしいほど上手になっていきました。ソチ五輪を経て現在まで、彼女の演技はトータルな意味で「世界最高のフィギュアスケート演技」になっていたと思います。


剣の道を極めようとする宮本武蔵のように、彼女は自分の中の理想の演技を極めることを主眼としていたと思います。「お客さんのために滑る」というエンタメ型演技とは対極の位置だったと。それはそれでスポーツとして素晴らしいことなんですが、在宅テレビファンの私は「もっとこれ見よがしに、大げさにアッピールしてくれないかなあ」と、はがゆく思うことが多かった。


しかし近年は、その点も克服されて、すばらしくアッピールする演技も見せてくれるようになりました。うわっつらの芸術性アッピールとは違う、もっと奥底から滲み出て来るような、見ていてヒリヒリするような凄みをも見せてくれる。ああこれが本来の「内側からの芸術性」なんだなと、私も彼女から教えられることもありました。


トリプルアクセル・クイーンが、そのジャンプに苦しめられて、現役競技人生を終える。何の因果かと嘆き悲しみたくもなる。どのスポーツもそうですが、フィギュアスケートも、やっぱり非情な競技ですね。


でも彼女は、歴史に残るすばらしい選手でしたし、その高潔な、穏やかで厳しい人格の立派さでもスポーツマンの見本だったし、私たちみんなのアイドルでした。本当に長い間楽しかったです。おつかれさま。