冨田勲と手塚治虫


冨田先生と手塚先生とは、なんというか、若いころ一緒に仕事した仲という以上に、愛恨併せ持つ複雑な感情がお互いにあるのではないか、と思います。

 
で、自分が色々観た冨田先生のインタビューの中から、手塚先生に関する事柄を書き出してみたいと思います。

 
ジャングル大帝について

 
ジャングル大帝の時は「音楽も、ともかく単なる劇伴じゃなく、ディズニーに負けない、ミュージカルに迫るものにしよう。」という意気込みだった。で、手塚さんはあのとおり、昼夜無いでしょう? だから夜中の二時頃電話とかかかってくるの。音楽をこんな感じで行きたい、って。当時はメールやファックスも無いし「今冨田に言っておかないと忘れちゃうから」ってんで掛けてくるんだけど。それが出るまで鳴らすの、しつこいんだ(笑)現場でももう、すったもんだやりましたよ。」


「後でジャングル大帝の音楽が好評で、オーケストラの交響組曲のレコードが出るとき、ジャケットの他にも何枚か絵が必要だったの。で、手塚さん、よせばいいのに「これは僕が1人で描く」って言って、アシスタント使わないで書いたの。連載で忙しい合間に墓穴だよね。で、ある日陣中見舞いに行ってみると、手塚さん、床で寝てるんだよね(苦笑)で、少ししたらまた起きて、続きを書くんだけど、モウロウとして半分寝てるわけ。でもね、絵は乱れないの! レオが船から海に飛び込むシーンの、波頭を書いてるんだけど、寝ててもちゃんと波になってる。これは恐れ入ったね。」


展覧会の絵


「手塚さんはこの曲を題材に、TV漫画とは関係ない実験的な短編アニメを作ったんです。最初はラヴェル編曲のオーケストラ版を使う予定でした。ところが、著作権使用料がもうべらぼうに高い。とても出せない。んで「じゃ冨田に編曲させて演奏指揮もやらせよう」ってことになった。けれどそれが、期日が4日間でやれというんですよ。ほうほうの体でやり終えましたけど。で、後にシンセで編曲をやり直す際に、その影響か、後からの僕の「展覧会の絵」には、ヒョウタンツギやハムエッグ等、手塚漫画の名物キャラクターが、音として登場するんです。」