ジョニ・ミッチェル「イーディスと親玉」



(意訳)


顔役の彼が到着すると
ディスコ・ダンサーも、私服警官も、
彼に挨拶をする
小さな町の、大きい彼に


そして周囲には光っている新しい口紅たち
19の娘達は学校ではタイプライターの犠牲者
ジャイヴ・バンドの音楽が、
タイプライターの音に聞こえる


顔役の彼は何も聴いていない
その目は、イーディスを捕らえ
その左手は、自分の右手を掴む
まるで己の欲望を
きつく捕まえるように


イーディスは輪の中
候補から外される娘達はひそひそ相談をし
ダイヤモンド・リングをもつ男達は
爪を隠してのどを鳴らしている
男共が持ってくる話は
やんちゃな危険をくぐり抜けたホラ話
男と女、互いにカマを掛け合ったり


「あの女はあっというまに老けやがってさ」と
顔役は疲れた顔を傾ける
スプーンにあふれる優しさ
彼のベッドのイーディス
雨の飛行機のハミング
壁のワイヤーのハミング
謎めいた知らない歌


彼女の頭の中に打たれた槌
半狂乱な雪のブラインド
ロマンチックな雪のブラインド
彼女は言った「彼は犯罪者だわ……」


イーディスと顔役
揺れ合う魅力
見つめ合う瞳
二人、目はそらせない
もう、目はそらせない



・・・アルバム「夏草のいざない」より。難しい歌です。なんというか「女性の側からの官能・たくましい男性に守られたいと言う本能的欲求を、歌にしたのではないかと思われます。欲望の果てには幸福は待っていそうも有りませんが、それでも人は、恋と官能から逃れられない面もあるのです。