ジョブズは単なるIT社長ではない!


アップル社会長スティーブ・ジョブズ氏逝去。たかだかコンピュータ会社の社長が死んだだけじゃないか、と思う人へ。ジョブズは単なるIT社長ではない!


彼の業績について、強調しておきたいことは2つ。「GUI画面インターフェイスの普及」と「アートやポップ音楽サブカルチャーとコンピュータ技術の融合」を図ったことだ。この2点は、文系・芸術系の人間の直感と発想だと思う。技術専門エゴに陥りやすい電子計算機分野に、使う人間(専門外)の立場から革新を加えたのは、ジョブズの業績だ。


GUI……グラフィック・ユーザー・インターフェイスは、アイコン画像をマウスクリックして作業を進めていく、今のパソコンのごく普通の操作方法のことだ。80年代初頭はまだマウスクリックでなくて、いちいち命令語を打ち込んでいたのだ。


GUIは元々は、ゼロックス社のアラン・ケイという人のアイディアだ。ジョブスは、ゼロックス社を見学に行った際、試作段階だったGUI操作を見て、「これだ!」と閃いたのだという。いち早くそれを参照して……悪く言えばパクって……自社製品MACパソコンに採用した。それをさらに、ウインドウズ(ビル・ゲイツ)が参照した……というのが、パソコン発展上の定説になっている。開発者ではないが、その先見性と、商品化への飽くなきこだわりは、伝説となっている。


サブカルとの親和については、今の「iTunes」での音楽ダウンロード販売の展開が象徴している。若い頃からロック好きで、ヒッピー生活なども経験したという彼の、ポップ音楽についての欲求「家に居ながらにして音楽を手に入れたい!」理想が実現されたものだ。


それと、デザイン系ソフト会社「アドビ社」との提携によるDTP・コンピュータ印刷分野への進出も彼の英断によるものだ。これで、いままで手作業クラフトマンの仕事だった芸術系デザインワークに、コンピューターがツールとして加わる事になった。


そして彼は、「ピクサー・アニメーション」の経営権も握っていた。音楽・グラフィック・映画。経理や学術計算の道具でしかなかった電子計算機を、サブカルチャー製作、あるいは享受するためのツールに変えた。「楽しいパソコン」にしたのは、彼、ジョブズなのだ。


だから私も、ロックと漫画で育った以上、アップル社=ジョブズには、最大の敬愛を持って来た。それは単に「コンピュータ屋の社長」ってだけでは済まない。ジョンレノンや手塚治虫と同じくらいの「人生の師」の一人だったのだ。