AORなんて言葉もあった


・・・AORという言葉があります。Adult-Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)大人向けのロックという意味です。なんかいかがわしい音楽みたいで好きじゃないですが定着しているから仕方が無い。70年代後半〜80年代前半のアメリカで、激しさよりはソフトな哀感と、バカ乗りせず適度にダンサブルなビートを持った「おしゃれな」音楽です。代表的なミュージシャンは、ボズ・スキャッグスホール&オーツマイケル・フランクスとか。


■ボズ・スキャッグズ「ジョジョ


ホール&オーツ「シーズ・ゴーン」


聴いての通り、ソフトな雰囲気とハーモニー、横揺れのふわっとしたスイング感ですね。ルーツをたどればスティービー・ワンダーマービン・ゲイという黒人ミュージシャンを経由して、ジャズに行き着きます。音楽理論専門的に言うとこの秘密は「4声以上のテンション和音の曖昧な響き」「16ビートのシンコペイションによるアクセントのずれ」にあるんですが。


ともかくこの手の「ホワホワしてるけど踊れる」音楽が私は好きで、特に高校生の頃はこのへんばっかり聴いていました。


ただこのAOR、大人の魅力ではありますがちょっと「すかしてる」んですな(笑)ロックとしてもダンス音楽としても、後のグランジやヒップホップにくらべりゃ中途半端で、端的に言えば廃れてしまった部分があります。


でもって日本ではどうだったのか。じつはAORなんて言葉がはやる前から、同様なことをやっていた人が居ました。誰を隠そうユーミンと、そのバックバンドだったキャラメルママの、松任谷正隆氏、そして御大、細野晴臣氏。特に細野さんは、日本の音楽の節目節目に必ず顔を出すと言っても過言ではない。このへんはもうちょっと調べてからね。


・・・ほんでもって、今現在も活動中の、日本のミュージシャンで「AORだなあ」と思えるミュージシャンで、かつ私が好きなのは、この二組になります。


スガシカオ「アン・シンメトリー」


キリンジ「スイート・ソウル」


双方とも音楽面も素晴らしいんですが、歌詞がいいですな。思慮深く、しかもかなり暗く屈折している(笑)スガ氏なんかモテ男の青春でもおかしくないけど、歌詞を読むと絶対、恋愛面で挫折体験しているとしか思えない。キリンジ堀込兄弟についても同様に、言い回しとか分かりずらいんだけど、でも単純なラブソングなんか死んでも書くもんか、という男気が見えます。音は軟派だけど詞の姿勢は硬派なのら。