感情労働って何?

・・・前の問題とも関係する難しい問題で、長い記事ですが、とても大事だと思うことなので。

■「感情労働」時代の過酷
http://www.asahi.com/job/special/TKY200706050068.html

「肉体労働」「頭脳労働」に対して、人を相手のサービス業で、常に自分を殺し、笑顔と優しさを維持されることが要求される職業のことを「感情労働」というそうだ。接客業は言うに及ばず、看護婦さんなんかは究極の感情労働といえる。「白衣の天使はいつも笑顔で元気」それをキープなんて相当困難だろう。

 それが、バブル時代からその後の消費者優遇………お客様は神様、クレームは言わなきゃ損、という風潮が増大するにつれて、感情を押し殺していつも冷静に、職務を全うすることが、年々困難になってきているというのだ。そこで、労働の「感情面」も注目され、こんな新語が言われ出したというわけなのだろう。

 上の記事にも書いてあるが、この問題は今始まったことではなく、個々の職場教育の問題ではないのか、という意見もある。しかし、それだけでは済まなくなってきている。

 一つ大きな原因は、前の記事でも触れた「家庭での父性的モラル教育の弱体化」で、「一億総ワガママ時代・溺愛バカ親と我慢知らずのガキ」が「権利ばかりを主張し、他人の気持ちをおもんばかれなく」なってきている、そんな社会風潮が、歴然とあると思う。

 その「消費者主張文化」で育った人間が、一歩職場に行くと180度回転、自己主張をおさえるどころか、他人の無茶な主張に作り笑顔で応えなければならない。この矛盾。こんな状況では、人格は曲がる一方だ。

 翻って考えてみると、労働は感情を押し殺すのが当然という部分も確かにある。しかし、仕事人である前に一人の人間。理不尽なことに対しては、たとえ客だろうが「それは無茶です」と言って良いと思う。仕事だから私情を殺して、ではなく、仕事だからこそ私情でぶつかっていける、労働とはそれが理想ではないのか。

 職場側もやっとこういった「感情労働の厳しさ」に気がつき、従業員のメンタルケアとか言い出しているという。一歩前進とは思うが、ここでもまたマニュアルの付け焼き刃ではしょうがない。

 いつも私は繰り返しているが、この問題も「日本人全体ひとりひとり」の、心の大問題だと思うのだ。「こころの崩壊」は、若い人から。下の世代から始まる。それは取り返しがつかないのだよ。