オカミの「親学」

・・・社会風潮の話は書いても、政治そのものの話は、実は書きたくないのだが・・・。

安倍総理が直属で発足させた「教育再生会議」というのがある。メンバーには、ノーベル化学賞野依良治教授を座長とし、ヤンキー先生こと義家弘介さん、林家一門のおかみさんの海老名香葉子さん等、面白い面々も選ばれている。

その会議が「親学」と題して、主に次のことを実践しようと提言……「しようとした」。

(1)子守歌を聞かせ、母乳で育児
(2)授乳中はテレビをつけない。5歳から子どもにテレビ、ビデオを長時間見せない
(3)早寝早起き朝ごはんの励行
(4)PTAに父親も参加。子どもと対話し教科書にも目を通す
(5)インターネットや携帯電話で有害サイトへの接続を制限する「フィルタリング」の実施
(6)企業は授乳休憩で母親を守る
(7)親子でテレビではなく演劇などの芸術を鑑賞
(8)乳幼児健診などに合わせて自治体が「親学」講座を実施
(9)遊び場確保に道路を一時開放
(10)幼児段階であいさつなど基本の徳目、思春期前までに社会性を持つ徳目を習得させる
(11)思春期からは自尊心が低下しないよう努める

「しようとした」と書いたのは、この内容に、周りから思いも寄らぬ反発があって、提言を大々的に発表するのを見送った、のだそうだ。

確かにさもあらん。オカミがここまで家庭での子育てに踏み込むのはどうかと私も思うのだ。1、2、などは女性の自由を侵害もしている。4にしても、じゃあ有給休暇扱いにしてくれるの?って問題もある。7などは、もう権威主義もいいとこで、ロック=反逆の哲学で育ってきた私などは「バカが!」と言ってしまう。3などはもはや、なんか笑ってしまうほどだ。

憲法改正とか、右傾化を促進させようとする今の政府の裏の顔が、チラチラ見え隠れするようで、正直嫌悪感がある。

・・・・・が、しかーーし、だ。

近年の親殺し子殺し、小学生の自殺、などのニュースを耳にするにつけ、これは右とか左とか、自由とか主義主張とか言ってられない問題なんだと思うようになった。親も、子も、人間は生きててナンボ。死んじまっては何にもならない。人権も個人の自由もあったもんじゃないのだ。

切れやすく打たれ弱く、命や死や人の気持ちが分からず、生きることに実際感がない。一部そう言った子供達を生み出したのは、家庭での触れあいの少なさ、家庭教育力の崩壊が最大の原因だ。その裏には、個人としての自由と欲求の実現を、人生で何より優先させよう……男も女も、そんな生き方を追求するあまり、「家=世代の存続」を軽ろんじてしまった、結果があるのではないか。

これを修復するには、いろいろ言われても、このぐらい個々の家庭に足を突っ込んで、強権的に強いるくらいのことをしないと、とても家庭が成立しない。少年少女の問題は、もはやそこまで来ているのだ、と思う。

戦前のイエ主義ではない。もっとピュアな、家族愛の素晴らしさ、子育て……子供を愛し愛されることの感動、人生を奉仕の気持ちと勤労の気持ちで生きることの素晴らしさを、僕らはもっと、語らなければならない。子供に対してより以前に、自分自身に対しても。