欠陥商品がスタンダード?

・・・ナリワイでは、私は通常は「Adobe Illustrator」と言うソフトを使っている。これが普段の飯の種なのであるが、今回「Microsoft-Wordで作ってくれ」という注文付きの仕事が来て、思わず顔をしかめてしまった。

作るのは5〜6枚の表ものでそれほど難しくはないのだが、案の定4日も5日もかかってしまった。原因は、まあ原稿自体が不完全で、あちこちの資料から調査引用して作り上げる必要があったせいもあるが、一番は「縦組み+英数混ぜ」だったこと。これが、まー実に性能が悪いというか、いろいろやってもでこぼこの、ひどい状態にしか組めない。

例えば「12月24日」なんて日付を、縦組みで組む。半角数字は最初、横に寝た状態で打って、あとでくるりと起きあがらせるのだが、この機能を使うと前後が少しスペースが空いて、ずれてしまう。仕方なく図形モードの「テキストボックス」で打って、所定の位置まで持ってくる「ツギハギ」の方法を取ったが、今度は位置が思ったところに行ってくれない。とんでもない位置に飛んでいったり、挙げ句の果てにボックスがどこかへ消えたりで、たった一行打つのに、下手をすれば10分20分とかかる。

呪いの言葉を吐きながらも、なんとか完成して客先チェックに出したが、いやーヒドイ目にあった。これでグローバルスタンダードのワープロだというから笑わせる。で、こんな一種「欠陥ソフト」が、あちこちのセミナーなどで「パソコンの基本的なスキル」として講義され、皆が有り難がっている構図になっている。これは絶対おかしい!

方や純国産ワープロソフトとして20年以上の歴史を持つ「一太郎」。徳島の小さなソフトハウスから出発し、一時は日本でのスタンダードとして最大のシェアを誇っていたが、近年は苦戦しているという。そういう話を聞くと応援したくなる。私がパソコンを覚え始めの若い頃は、他にも「松」とか「P1」とか、純国産でいいワープロソフトが数種類あって、それぞれしのぎを削っていた。まだマイクロソフトもそれほど巨人ではなく、日本のソフト開発も、大手よりも小回りがきく中小のソフトハウスの方が元気だった。戦国の群雄割拠みたいだったが「日本人が使うソフトは日本人が作る」気概みたいなものが感じられた。

今はパソコンソフトより携帯電話のソフトがそういう「活気ある」状況なのだろうか。Microsoftに限らず、私の使っているApple-Macintoshアメリカ生まれ。考えてみるとパソコンの世界というのは、黒船毛唐の権力者に不平等条約で苦服させられた、どこもかしこもそういう世界なのだ。