象牙の塔の住人は

「こういう……象牙の塔に籠もっているような人の方が、私には合っていると思ったんですよ」

テレビの「なんとか波瀾万丈」という番組に、博物学者の荒俣宏ご夫妻が出ていた。冒頭のセリフは、番組で「どうして荒俣先生と結婚しようと思ったんですか?」という問いに、奥さんが答えたセリフだ。「象牙の塔?」何だろうこの表現は。えらい綺麗な雰囲気の言葉だが、今まで聴いたことがない。意味がまったく分からない言葉だ。

ここ、はてなダイアリーで調べられた。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BE%DD%B2%E7%A4%CE%C5%E3
象牙の塔とは、閉鎖的な大学や学会・学閥などを差す。そこに籠もるということは、学者などが研究熱心のあまり現実社会から疎遠になってしまうこと」だそうだ。綺麗な言葉だと思ったのに、あまり良い意味ではなかったのだ。

荒俣宏先生といえば、映画にもなったSF「帝都物語」の作者・作家の顔を持つ、妖怪研究家としても有名だが、本業は博物学者(これがよくわからない学問なのだが)である。魚類図鑑や昆虫図鑑の執筆が主の仕事なのだろうか。とにかく「変わり者学者」としては日本でも有数の人だ。研究のため面倒くさいからと10年間出版社の一室に寝泊まりし、常に着た切り雀で風呂は月に一回、「汗をかいたときは公園で「砂浴び」して済ませる」という伝説があるほどだ。収入も時間もほとんど研究のために費やされ、まさに「象牙の塔に籠もって」研究執筆に没頭していたのだろう。

そんなヲタクの代表みたいな人を、「私に合っている」とおっしゃる、この奥さんの感覚が、これまたよくわからない。「こつこつ仕事を積み重ねる人って、尊敬するんです」ともおっしゃっていた。奥さんご本人はちゃきちゃきしたような方で、自分にないこつこつタイプを求めたというワケか。それとも母性本能をくすぐられたのか(笑)ご本人も虫とかが好きで、ミミズや毛虫ですら可愛い♪といって手にはわせたりするそうな。してみると、変な動植物とにらめっこしている荒俣先生のお気持ちは、結構理解できているのかもしれない。縁とは不思議なものであるが、しかし幸せそうでうらやましい限りだ。

象牙の塔の住人を、暗いダサイで片づけず、本質をみてくれたこの荒俣先生の奥さま、かなりエライと思って見ていました。