去りゆく英雄、続けるヒロイン

まずフィギュアスケート、村主選手、世界選手権銀メダルおめでとうございます! 終わりよければ全てよし、五輪4位とあわせて、世界を相手に戦いに戦った今シーズン、お疲れさまでした。 また来シーズンに向け、鋭気を養って下さい。

もう誰しもが認めていることだけど、村主選手は世界に数人の、常にメダルを期待されるトップクラスの選手。ということは、例えばイチローとか中田とかヤワラちゃんとかと並び称される、日本を代表するトップアスリートの一人だということです。
その彼女が、一番最初に「バンクーバーまでやる」と言ってくれた。ファンとしては本当に嬉しい。

しかし前にも書いたが、今後4年間は、彼女にとってはものすごく厳しいものになるだろう。若手の台頭……来シーズンは浅田真央ちゃんもシニアに入ってくる。安藤ミキティだってだまっちゃいないだろう。さらに、今回から替わった採点法・ルールの壁も立ちはだかる。ジャンプなどの「技術系」がより重視され、彼女の持ち味である「舞踏芸術性」は、ややないがしろにされがちになったのだ。そして、何より年齢と体力。見て分かるとおり、華奢な彼女はパワーがないし怪我も多い。ピークを過ぎて衰えていく自分の肉体との戦い。実はこれが、一番深刻かも知れない。

それらを全て引き受けて、村主選手は「現役続行」をする。
五輪で燃え尽き「態度を保留」している荒川選手は、その村主選手の姿を見て、何を思うのだろうか。

そして、もうひとり、ジャンプの原田選手が、現役を引退した。まさに「去りゆく英雄」だ。

何度もテレビで放送された長野五輪での「ふ、ふなき〜〜」の涙声シーンに象徴されるが、この人にはホント、今回五輪のポカを含め、われわれいろんなものを貰った気がする。でもどんなときでも、マスコミに登場するとき、この人が不機嫌だったりぞんざいな対応だったりしたシーンは、少なくとも私は一度も見たことがない。常にトップアスリートであることを意識し、ファンを意識していた証拠である。頭が下がる思いである。

勿論彼も、上記の村主選手と同じように、若手の台頭、ルールの壁、自分の体力の衰えと戦いながら、現役にこだわってこだわって長く続けてきた。一度は頂点を極めた彼。本当は何もかも投げ出して、無理解な世間に「ばかやろー!」といってやめたかったに違いない。でも原田選手は、笑顔を作って競技を続けた。

その原田選手が、今日ジャンプ台を後にした。ありがとうございました。あなたは本当に「英雄」でした。忘れません。