やかましい自動販売機

以前書いたが、一部のコンビニATM支払機で、現金をおろす際に「現金をお出しします」と、機械が「しゃべる」機種がある。これでは「今私お金持ってますよ〜、どうぞ盗んでください」と回りに吹聴するようなモノで、とても恐くて夜中に現金がおろせない。あまりにもデリカシー、マナー、思いやりを欠いた仕様で、作った人間の人格を疑う……というようなことを書いた。

ここまで罪はないが、缶コーヒーの自動販売機も、最近よくしゃべる。某○イドーの販売機なんか「オブリガード!」などとスペイン語まで話す。それもわざと「関西なまりの日本人」が吹き込んだらしく、すごい不自然なイントネーションになっている。ウケを狙っているのだろうが、全然うざいだけ、やかましいだけなのだ。都市部ではこういう販売機は近所迷惑なので設置してないと思うが、これまたデリカシーを疑うものだ。

とあるネッ友の掲示板で「送迎会の酒の席で一人ゲームをしちゃう」人の話が出た。これと、このデリカシーに欠いた機械達と、どこか符合点があるような気がしてならない。

謙譲とか品格とか、日本人古来の考え方がある。これには、形式ばかりが優先され本当の心が失われてしまった面も大いにある。しかしその奥には、他人の心をおもんばかる優しさが、ちゃんと活かされていて、その上で成り立っている部分も大いにもあるのだ。そういった、人の心を先読みして、こうしたらこうなって困るだろうな、と考える「気遣い・思いやり」が、日本人の中から、どんどん失われて行っている……と思う。このことも、ずっと書いてきたことだ。

効率と営利優先の企業社会の下で、家族の生活を守るために、我々はいつしか口を閉ざした。これが高じると、職業的倫理観も失われ、姉○建築士のような事件も起こる。これだって「気遣い・思いやり」と「品格、プライド」があれば、起こらなかったことだ。昔の頑固な職人気質なら起こらなかったことだ。

コンピュータシステムに縛られて、とんでもない事件が起こる話は、SF小説の世界ではもうネタにもならないほど陳腐なものになった。なのに今、その陳腐な、下劣な物語が、現実となっていくのだ。