改めて萩尾先生叙勲


・・・萩尾望都先生の叙勲のインタビュー記事が、国営放送サイトに文字になってあります。


http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/800/119069.html


萩尾先生らしい冷静な文面のインタビューだと思いました。先生のお母さんが、一昨年の朝ドラ「ゲゲゲの女房」を観てらして「漫画家があんなに大変とは知らんかったとよ。失礼いたしました。」と娘に謝ったといいます。お若い頃のこのお母さんとの葛藤が、創作の一大テーマになっている萩尾先生にしてみれば、「今頃になってやっと……」という感じで、大苦笑したんではないでしょうか。人生最大の苦笑ですね。


トーマの心臓」連載当時に人気投票が最悪で、いつ打ち切りになってもおかしくなかった。その時に「ポーの一族」の単行本が出て、それが思いのほか売れて、じゃあ連載もちょっとやらせてみようかとなったと。面白い話ですね。このように萩尾さんは、実はその時々のナンバーワンの人気作家ではなかった。むしろ2番手3番手で、でも熱狂的なファンやマニアが支持して、単行本で真価を発揮する作家さんだったんですね。人気投票がすべてで、結果が悪けりゃさっさと切ってしまう傾向がある昨今、編集側がじっくりと大器を育てる事が果たして出来るのか。表現全般の軽薄化・短期決算化を憂慮してしまいます。


あと萩尾先生は、手塚先生始めいろいろ他の漫画家の名前を列挙されて、その流れの中で自分があるんだと、言うような事をおっしゃってます。里中満智子先生とか西谷祥子先生とか、そういう少女漫画拡張期の作家さんは、皆「人間としての心の奥底」「女性としてのアイデンティティー」を追求しています。決して萩尾さんが特異な訳ではないのですね。少女漫画の文学性って、例えば大和和紀先生とか、ベテラン巨匠と呼ばれる方なら誰でも発揮していた。このことを、萩尾先生はおっしゃりたかったんではないでしょうか。