三浦綾子「塩狩峠」


・・・久しぶりに小説。三浦綾子塩狩峠」読みました。もろキリスト教テーマでした。明治時代に北海道で起こった鉄道事故で、殉職した鉄道員の実話をもとにした作品。主人公は、峠でプレーキが壊れた列車の前に、まさに身を挺して列車を止め、乗客の命を救うのです・・・。


こういったカミカゼ的な自己犠牲をテーマに、創作作品を書くことは、いろいろ誤解や抵抗も受けると思う。実際にアマゾンなどでの感想も「感激した」という人と「納得できない」という人と、見事に分かれている。


・・・私は、ぐっときましたけどね。目頭が熱くなりました。(TT)


「どのような場合でも、死んでは何もならないではないか。自己犠牲など無駄で愚かなことだ」という人がいるかもしれない。全体主義の引き起こした「戦争」によって悲劇に導かれた日本人は、これからは個人として生きるんだと言い聞かせて60年以上やってきた。それは確かに正しかった。


しかしそのせいで、ひとと繋がる心、ひとを尊重する心を、どんどん薄めてきたように思う。ひとを尊重し、愛すること。その究極の形をきわめていくと「自己犠牲」に行き着くのかもしれない。こういう宗教的な愛「右の頬を打たれたら左の頬を出せ」という生き方を、賛同するかしないかはともかく、馬鹿だと一笑することは、絶対に出来ないのではないか。そう思う。