MOIエキシビション、そして村主


はい、フィギュアスケート全日本選手権エキシビション「メダリスト・オン・アイス」(MOI)今年も去年に引き続き、生オケ入りの豪華なものになりました。入場料いくらなんだろう。テレビのゴールデン放送はいつまで続くんだろう。とか、邪念も交えながらみてしまいました。


えーまず、上位入賞は逃したものの、エレガンスさが売りの太田由希奈、元気一杯の武田奈也選手を続け様に放送。私は真央ちゃんや美姫ティよりもキャラが立ってるこの二人の方が好きなので、コレは嬉しかったです。


大健闘の鈴木明子選手は、EXもすごーくよかった! このひとの演技をじっくりみたのは今年初めてかもしれない。技術と表現のバランスも取れた良い選手です。世界の舞台に立ってもおかしくない選手だと思いました。


中野友加里ん。実は今シーズン、一番良い演技良いプログラムを滑っているのは彼女かも知れない。EXもうっとりさせてくれた度数はナンバーワンです。男子の小塚君との即席ペアも「信夫先生門下姉弟弟子」共演で良かったです。


で、主役の二人、安藤「サムソンとデリラ」浅田「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア」それぞれのショートプログラムを生オケ伴奏で。いいけど、プログラムとしては去年の安藤「シェラザード」浅田「ショパンノクターン」の方が良かった。この二人には、ちょっと憎まれ口を書いておく。笑。


そーして! 順序は前後しますが、問題の村主選手、なんとドビュッシーの「月の光」だぁああっ! こんなの観たことない。いつの間に仕込んだんだろ。もちろん生オケ演奏。しっとりと、しかも印象派の茫洋とした世界に、何とピッタリ合っていることか! これ久々の「村主ワールド」だああ。ミントグリーンのワンピ、ちょっと地味目だけど綺麗。曲の表現がやっぱダントツ。ねー。去年のボレロといい今回の月の光といい、こういうのを長くしてフリーでやればいいのにと思うんですけどねえ。いやーうっとりです(^^)


・・・こっからがぶつぶつと繰り返し書きますが、村主章枝という選手はスポーツ選手と言うより表現者です。スケートという手段を使って不特定多数に何か抽象的な「もの・こと」を伝えてきたのです。「銀盤のアクトレス」「氷上のアーティスト」というコピーは、ヤラセでも伊達でもないのです。しかもそこには頑固な自発的自我と、深い宗教性のようなものがある。「神様と観衆のために滑る」ということを、大まじめに人前で言ってはばからない人です。創造と自己表現が苦手な日本人の中で、しかも「やらされる体育」から抜け出せない日本のスポーツ界の中で、それは異彩でありました。でもコレこそが本物。バレエやソシアルダンスの伝統から生まれたフィギュアスケートの、コレが本来の姿であり、村主選手の芸術性を追求するやりかたこそ王道だと思ってきました。今でもそう思っています。


しかしフィギュアスケート界は、より明快なジャッジメントをする方向にルール改正を行いました。技一個一個に持ち点制と減点制度を取り、より技術の優秀な、スポーツ的、体操競技的な演技をする選手が優遇されるようになりました。芸術的な表現を売りにしていた村主選手は、そこでは当然苦境に立たされます。20代後半へ突入という自分の年齢から来る体力の衰えとも戦わなければなりません。さらに、浅田、安藤、中野などの若い選手の台頭はご存じの通りです。


そんな中で、彼女は競技会にこだわり、五輪出場とメダル奪取へこだわり、現役を続けています。1番プロ向きの演技が出来、アメリカのアイスショーを回った経験もあり、欧米にも「顔が利く」彼女がです。


この「往生際の悪さ」目標達成のために、ぶざまでもあきらめず努力する姿。引き際の美学をよしとするのが日本人だなんて誰が言った、そんなことはクソ食らえ。自分が納得してやりたい・やれると思ったら、やるのみ! なりふりは構っていられるか………村主選手の姿からは、古い根性論とは違った、欧米的自発性に基づいたストイックさがひしひし伝わってきます。それはもう痛いくらいです。


だから、私は、村主選手を追うことにしたのです。イバラの道を、力にはなれないけど、見定めて行きたいと思っています。


■追記の追記
例年なら、全日本の1位〜3位が世界選手権へ、4位〜6位が四大陸選手権へ、出場するのが慣例だったのに、今年は村主選手の他に、安藤、浅田が四大陸にも出るそうです。何故に? と思ったら、今までテレビ中継のなかった四大陸が、今年は○ジテレビで中継されるといいます。ピンときたのは「ジャパンマネーが動いたな」ということ。国際スケート連盟にフ○テレビ経由で日本企業から相当金額が渡ったとしか考えられません。不正ではないのですが、嫌な感じですね。