「海街diary1 蝉時雨のやむ頃」

・・・久々に、ふるふる来るぐらい泣ける漫画に出会ったので、日記に報告。

吉田秋生「海街diary1 蝉時雨のやむ頃」です。

・・・古都・鎌倉を舞台にしたホームドラマ。ちょっと複雑な家庭環境に育った三姉妹が、ある日「別れた父」の訃報と、末の「妹」の存在を知らされます。主人公の次女・佳乃は「父親が死んだっていうのに、こまったなあ、ちっとも悲しくない」という気持ちで、父の葬儀へ向かいます。さて……というお話。

この作家さんも70年代から活躍してきたベテラン、私ら世代という感じの作家さんです。少女漫画を越えたと言われるバードボイルド・アクション「BANANA FISH」等、国家機密に挑戦する超人的な男性主人公とか、少年漫画以上にものものしい(笑)作風がウリです。が、もう一つこの作品のように、ほのぼのとして切ない人間関係を描いた作品も得意です。それが、長い作家生活の間に磨かれた人間観察力にもとづいて、結実したという感じの作品です。

昭和のたたずまい溢れる木造の家、お寺や神社、江ノ電が走る湘南の風景。この舞台設定におおいに頼っている部分もありますが、そんな風景の中で、ひっそり暮らす四姉妹を通して「家族」や「身近な人間関係」を描いていく……地味で渋い作品で、テーマも重いんですが、実は明るいホームコメディーといってもいい作品です。軽妙なギャグで笑わせながら、テンポよくリズム良く話が進んでいく。キャラの立ち方、セリフの的確さ、起承転結。ベテランの味とコクって言うのでしょうか。思わず「上手いなあ〜〜〜!」と口に出して感心してしまうほどでした。

同じ舞台設定の姉妹作に「ラヴァーズ・キス」という作品もあります。そっちは言ってみれば少し前のトレンディードラマ風ですが、下手なドラマなど完全に越えてます。小○館のまわしものではありませんが(笑)のしをつけておすすめします、はい。