腹にどすんと

藤原正彦著「国家の品格」を読んだ。昨年ベストセラーになった本だ。この手の「ムズイ本」としては極めて異例の大増刷だったらしい。

結論を先に言う。ダメだ、こんなものは!

「論理優先の欧米の考え方に毒され、日本は古来の情緒や思いやり・品格を失ってしまった。今こそ自信を持って取り戻そう」というもの。これは常々、私も言ってることと合致する。その点では良いのだ。しかし……。

この本を読んでいて、どうしても腹にどすんと落ちてこない。応えるものがないのだ。西洋と日本の比較文化論のところも、考証は甘いわ独善的だわ。頭でっかちに思えてしまう。筆者が、自分で生きて来て、体を使って汗を流してぶつかって掴んだモノ・経験、そういったものが、どうにも見えてこないのだ。

現代社会への問題提起としては良いだろう。でも内容はあまりに安易だ。この本の内容を信じ込んでしまう人が大勢出るとすれば、そっちの方がむしろ怖い気がする。

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